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当クリニック院長 石塚俊二が医療を中心に情報発信
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58 知性の罠

人生、一瞬先は闇であるとつくづく実感する。そして注意して生きていかないといけないとも強く思う。
生きていく中で突発的な事故や事件で命を奪われたり、突然の病気で人生が大きく変わることもある。いしづかクリニックの院長ブログ58 知性の罠のイメージ
これは避けることが出来ない運命とも言えます。しかし、これらの避けれない出来事ではなくても自身の一つの言動や行動で人生の窮地に陥ったりすることもある。
例えば、政治家や芸能人がたった一つの発言や行動で今まで築き上げたものを全て失ったりすることがある。
特に有名で社会的地位もある優秀な人が誤った判断や行動で自分が身に置いている世界から退かなければいけなくなった事件や出来事を目にするようになってきた。以前も、1990年代に起きた地下鉄サリン事件では、一流大学の学生や卒業生たちが多数関わっていたことで、多くの人が驚愕しました。また、アップルの創設者であるスティーブ・ジョブズのような賢人ですら、最新の医学を用いたなら生存確率が上がったであろうと思われるにもかかわらず、自身の信念で、独自の癌治癒方法で末期に取り組み有効な効果は得られず亡くなられた。
最近の芸能人でも頂点を極めていると思われた人が、取り返しのつかない罪を犯し引退を余儀なくしてしまうことがありました。“賢いはず”の人がなぜか誤った決断を下すのを見たことがないでしょうか。
私たちは“賢い人は優れた判断を下すものだ”と思い込んでいます。しかし、実はそうとも言い切れないようなのです。

一流大学を出て、長いこと知識を積み重ねた人ですら、判断を誤ってしまうことがあります。
知能や教育程度が高い人が間違えるケースは実にたくさんあります。
実は、IQが高く、テストの点数が高い“賢い人ほど、罠にかかりやすい”現象を引き起こすと提起され、“インテリジェンス・トラップ”と言われています。これはイギリスの元シニア・ジャーナリストで、科学ジャーナリストのデビッド・ロブソン氏が“インテリジェンス・トラップは、賢い人ほど愚かな決断を下す”と提唱した考え方です。
最新の研究によると、賢い人は、ある種の愚かな思考に人並み以上に陥りやすい。
例えば、知能も教育水準も高い人は、自らの過ちから学ばず、他人のアドバイスを受け入れない傾向があります。しかも、失敗を犯した時には、自らの判断を正当化する小難しい主張を考えるのが得意であるため、ますます自らの見解に固執する。
これは医療の中でも起こりえることです。私自身、医師が賢い人の集まりとは全く思いませんが、医療という特殊な環境の中だけで言えば、最も知識が多いのは医師です。その医師が自身の知識だけを信じて自身の判断だけで力を振りかざすと大きな過ちを起こすことになると思われます。
おそらく患者さんはその医師の知識だけで治療され、他の選択肢も与えられず治療がうまくいかなかったとしてもそれを信じ、疑うことなく一方的な医療を突き進むようになると思う。これも医師のインテリジェンス・トラップの一つによって不幸な結果となったものと考えてもよいと思います。
いしづかクリニックの院長ブログ58 インテリジェンス・おTラップのイメージ私が医師になりたての頃は、自身より知識や経験が豊富な医師の考え方は絶対であると教えられる傾向がありました。まして、カンファレンスで治療方針を決定するとき、自分の教授が治療法は絶対に正しく少し反対意見がでてもその意見はねじ伏され、それ以外は言えない雰囲気もあったような気がします。
今思うと、医師という職業もインテリジェンス・トラップに陥る傾向があるような気がします。
医療も今は情報の公開が重要な時代であり他にもっと効果的な治療があればすぐに患者さんも見つけられるようになり、また一つの医療機関だけの固有の治療法ではなくどこの医療機関でも一定の標準治療というものがあり、まずはこれに準じて治療することが一般的になっています。
これらを考えると、知能は複雑な情報を迅速に処理したりする際に起こるインテリジェンス・トラップに対して、その知力による抑制と均衡も必要であり、それがなければ知能が高くなるほど、思考は偏るかもしれないと思います。

近年の心理学研究は、インテリジェンス・トラップを回避するのに役立つ知的特性を“認知反射”とよび自らの思い込みや直感を疑う特性のことです。加えて、知的謙虚さ、オープンマインド思考、好奇心、優れた感情認識なども重要であると言われております。これらが組み合わされば、知性を正常な軌道にとどめることができます。
好奇心、内省、心の広さ、知的謙虚さ、成長志向といった後天的に身につけられる思考が重要で、この考えで合理性を判断し“本当の賢さ”が身につくと言われています。
デカルトは次のように述べています。
“秀でた知性を有するだけでは十分ではない。大切なのは、それを正しく使うことだ”と述べています。
社会的、経済的にも頂点の人が考えつかないような行動によって社会の奈落の底に落ちていく事件や出来事がインテリジェンス・トラップによるものではないかと考えるとつじつまが合うことも多く、知識として身に着けておくべきだと思います。

令和7年6月:いしづかクリニック 
院長 石塚 俊二

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