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西宮市の内科|石塚ファミリークリニック-院長ブログ|20 研修医時代を思い出す

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20 研修医時代を思い出す

研修医のイメージイラスト

先日、長男がこの4月から研修医を始めることとなり研修医の在り方、働き方などを二人で話すことがありました。
研修制度も僕が経験した時代とは大きく変化していることに驚かされました。
2004年より新研修医制度や働き方改革によって、待遇が改善されています。

 

現在、医師の研修は卒後1~2年目の前期研修と卒後3~5年目の後期研修に分けられます。
前期研修(初期研修)は、医師法によって義務づけられた2年間の臨床研修です。そのため、数ヶ月に一度研修する診療科が変わります。病院によっては関連病院を複数持っているところがあるので研修する病院が変わることもあります。
一方、後期研修は法令によって義務づけられたものでなく、学会や日本専門医機構、あるいは医療機関の独自のプログラムです。専門の診療科の医師として一人前になるための期間です。初期研修医とは違って、指導医や先輩医師の指導下ではありますが、実際に患者さんを診察しますし、“一人の若い医師”として見られます。
よって研修医という場合は前期研修医を指し、後期研修医は医師としての位置付けになります。

 

我々の時代の研修医は激務のうえに給料も低く抑えられいわゆる“丁稚奉公”のような状態でした。
今、僕は医師になり33年目で、卒業は1990年のちょうどバブル期の終わりと重なります。ただ、僕の卒後の研修は、バブルの恩恵とは無縁の代わりに“研修医残酷物語の時代”がありました。
当時の新卒医師は現在の初期研修とは異なり、いきなり希望する科へ(僕の場合は内科)配属となり、すぐに患者さんの受け持ちが始まります。

 

医師となりすぐに命と向き合うわけですから、これが相当なプレッシャーとなります。もちろんすべて指導医の指示を受けるわけですが、当時の研修医の仕事はかなりきつい内容でした。
まず、朝の症例検討会で患者さんの状態を発表するために前夜から泊まり込み、プレゼン用の資料を作ります。朝は6時には起きて病棟で受け持ち患者さんの状態を看護師さんに聞きその後、患者さんの診察と採血を行います。
患者さんも朝の7時ぐらいに主治医が訪問されるのでたまったものではなかったのでは思います。また、採血も決して上手ではないので時間がかかることもあり患者さんから怒られることも多々ありました。
その後、8時より朝の検討会です。教授の前で受け持ち症例のプレゼンテ―ションをすると、各専門医の先輩から矢のような質問が浴びせられます。タジタジになりながら言われたことややるべきことをすべて記録しておきます。

 

時には「何をやってんいるんだ」「ちゃんと患者さんの状態を把握しているのか」「もっと勉強しておけ」など罵声に聞こえるようなヤジが飛んできます。今なら病院のコンプライアンスで問題となるようなことは日常茶飯事です。
これに堪えやっと医局の部屋で数分間の朝食にありつけます。その後、朝の9時から外来診療が始まり、担当医の横でカルテ記録や検査依頼をだし、外来担当医の診察方法、患者さんの診察方法を学びます。
この間も病棟の看護師さんから患者さんへの指示依頼があり、外来の間に連絡したり、また病棟に駆け上がり指示を出してまた外来に戻ってきます。その後、うまくいけば昼食時間がありますが、飛ばす場合もあるので朝食はお腹いっぱい食べなければなりません。

 

午後は検査のため患者さんの車椅子やベッド移動を看護師さんと一緒に行かなければなりませんでした。
その検査室でも他の科の先生からの質問を受け、怒られながら病状を説明し検査結果の詳細を聞き取り、指導医に報告しなければならず緊張が続きます。さらに、午後2時までに病棟で明日の検査予約を看護師さんに依頼しなければ伝票も自分で作成しなければならずこれまた時間との勝負です。
夕方からは再び症例検討会が待っています。例えばある患者さんが、肝臓と心臓の2つの疾患があれば肝臓と循環器の2つ検討会に出なければなりませんし、それぞれの準備をしなければなりません。

その後、2つの検討会の結果を指導医に報告して治療計画を立てなければなりません。毎日、気が付けば深夜でした。
自分の時間が持てて受け持ち患者さんのカルテ記載ができるのは、毎日午後9時ぐらいからでした。この記載が終了し、他の同級生と数人で大学病院周辺のラーメン屋やご飯屋さんで食事をしてみんなで励まし合いながら時間を過ごすのが至福の時間でした。

 

疲れた研修医のイメージイラスト研修に休暇はありません。患者さんの病状は急変するので土日祝日もすべて出勤しますし、こちらも病院に行かないと気が気ではありません。
さらに週に2~3回は当直勤務がありました。僕らの時は、4月に医師国家試験の発表で、5月から研修が始まりましたが、家には着替えを取りに行くだけで、16日間連続で大学に寝泊まりしたこともあり(僕の友人は23日間でした)、初めて丸一日の休暇を取ったのは、確か9月の秋分の日であったと思います。

世間がバブルに沸く時に研修医はこんな働きぶりだったので、むしろ“ロスジェネ時代”に共感する他職種の方もいます。

 

こんな働き方でしたが僕の人生の中で研修医の時代が最も楽しい時期の一つでした。ボロボロになるまで働いて頭が破裂するくらい考え、知識を詰め込むことで毎日、自分が進歩している実感がわかるそんな時はなかなかありませんから。
頑張れ研修医、頑張れ息子よ。

著者:石塚ファミリークリニック 
院長 石塚 俊二

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